2019.12.26
エキシマライトによる光線療法について
こんにちは。TMクリニック西新宿院長のおかだりかです。
前回は白班の治療法として光線療法、特にエキシマライトのご紹介をいたしましたが、様々な疾患の治療に有効とされる光線療法につきまして、今回はさらに詳しくご説明したいと思っております。
光線療法の種類別の特徴
紫外線は、波長の長い順にUVA,UVB,UVCに分けられ、皮膚科領域で特に使用される紫外線はUVA,UVBであると前回の記事でご説明いたしました。
従来UVAを用いた、通称PUVA療法が広く使用されていましたが、最近ではUVBを用いた治療のほうが副作用が少なく効果が高いとされています。
またUVB治療も
①ナローバンドUVB(311±2nmの波長)
②エキシマライト(308nmに限定した波長)
の2種類ございます。
それでは、それぞれ種類別で具体的に比較していきましょう。
エキシマライト | ナローバンドUVB | PUVA療法 | |
特徴 | 病変部のみにスポット照射が行える
1回での照射時間が短く、短時間での治療が可能 |
ソラレンの内服、塗布の必要がなく簡便
治療に必要な波長のみ使用しているため、副作用も少なくすむ |
光感受性薬剤(ソラレン)を塗布または内服して照射 |
課題点 | 病変部の範囲によっては治療回数が増える
照射部位に反応性の紅斑が出現することがある |
照射範囲が広く、健康な皮膚にも照射される | 内服や塗布などの手間がかかる
ソラレンによる光過敏
過剰照射による日焼け 症状、色素沈着
長期照射による発がん性 |
ナローバンドUVBからエキシマライトへ
従来、PUVAによる乾癬治療は、紫外線療法として確立され、乾癬だけでなく白斑など数々の皮膚疾患に対して応用されるようになりました。その後、広波長領域のブロードバンドUVBなどの新たな紫外線療法が登場していきました。
ブロードバンドUVBが出た後、UVBの中で紅斑が出にくく乾癬の治療に有効な波長の検討がなされ、311nmの波長を選択的に有する狭い波長領域のナローバンドUVBが登場します。
ナローバンドUVBはソラレンの内服・外用が不要、PUVA療法を行った場合に必要となる遮光などの生活制限がない、安全性も高く小児や妊婦にも使用可能などの点から、急速に普及していきます。
ナローバンドUVBによる治療は、20年近く使用されてきております。
今では乾癬を初めとして、保険内でアトピー性皮膚炎、尋常性白斑、菌状息肉症、掌蹠膿疱症、皮膚T細胞性リンパ腫、類乾癬、保険外では円形脱毛症、結節性痒疹の治療など、幅広く用いられております。
ナローバンドUVBが普及すると、その課題点である健常部位への紫外線暴露を避け、病変部のみを局所照射できるターゲット型の紫外線治療器の必要性が高まってまいりました。
そこで普及したエキシマライト療法は、それらの紫外線療法よりさらに効果の高いと言われている308nmの紫外線を、患部に照射し処置する最新の光線療法です。
従来、広い照射が必要であった光線療法の中で、よりターゲットを絞った照射ができるため正常な皮膚へのダメージを防ぐことができ、また1回の照射時間が短いため、外来で短時間で治療が終えることが可能です。
エキシマライト療法とナローバンドUVB療法の比較を下記表で記します。
ナローバンドUVB | エキシマライト | |
照射時間 | 1-5分 | 1-5.6秒 |
照射範囲 | 広い | 狭い |
照射出力 | 1 | 100倍 |
治療頻度 | 週1,2回 | 週1,2回 |
効果発現までの回数 | 10-30回程度 | 5.6-20回 |
特徴として、ナローバンドUVBは広範囲に照射可能なため、乾癬、白斑、円形脱毛、アトピーなどの比較的広い範囲の治療に向いており、一方エキシマライトは、広範囲の病変は不得意ですが、狭い範囲の難治性病変(鱗屑を伴う乾癬、局所の難治性白斑・円形脱毛、痒疹など)に向いていると言えるでしょう。
当院での実際の治療
ここからは、当院で実際に行われている治療の流れのご説明をいたします.
当院で使用しているエキシマライトです。
ウシオ電機株式会社 セラビーム® UV308
実際の治療の流れとしては、
1.問診
2.診察させていただき、照射部位、時間を決定いたします
3.テスト照射→照射(1範囲につき数秒〜数十秒)
となっております。
また、こちらの治療を受けられない方につきましては以下の通りです。
1.日光や紫外線で悪化する病気のある方
2.以前に皮膚ガンや前ガン状態があった方
3.免疫抑制療法を受けている方
4.以前この治療でアレルギーの生じた方
※その他にも、治療中の病気がある方は、そちらについても必ずお伝えください。
費用につきましては、1回あたり
保険診療(3割負担)
約1000円(初診、再診料をのぞく)で治療可能です。
まとめ
エキシマライトによる光線療法につきましてご説明いたしました。
次回は、それぞれの疾患別につきまして、またコラムを書かせていただきたいと思っております。

皮膚科専門医
岡田里佳
2008年名古屋市立大学医学部卒業。 内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。その後大学病院に戻り、急性期・慢性期の皮膚疾患を幅広く経験した。
資格:日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 日本内科学会認定内科医 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医 日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
カテゴリ: 光線療法