2017.12.29
アレルギー性蕁麻疹(じんましん)の原因と治療法を専門医が解説!
こんにちは。TMクリニック西新宿院長のおかだりかです。
蕁麻疹(じんましん)という発疹は、いろいろな原因によって生じます。原因が特定できない「特発性」の蕁麻疹が多いですが、アレルギーが関与する蕁麻疹もあります。食物や薬剤を摂取した後に出現する蕁麻疹の場合、アレルギーが関与している可能性があります。アレルギー性の蕁麻疹はどのように診断して、治療するのか、皮膚科専門医がわかりやすく説明します。
アレルギー性蕁麻疹とは
アレルギー性蕁麻疹の原因
蕁麻疹は様々な原因で生じ、原因が特定できないことも多い皮膚疾患です。アレルギーが関与した蕁麻疹とは、どのような蕁麻疹のことを言うのでしょうか。まずは、ここをしっかり確認していきましょう。
アレルギー性の蕁麻疹とは、食物,薬,植物 (天然ゴム製品を含む)など特定の物質に曝露されることにより生じる蕁麻疹のことです。この蕁麻疹が発症する時は、それら特定の物質に対する 抗体(IgE抗体) を介した反応が起こっています。通常は食物などの抗原に曝露してから数分から数時間以内に蕁麻疹が生じます。
代表的なアレルギー性の蕁麻疹としては、食物や薬剤を摂取した数分後に生じる蕁麻疹があります。食物アレルギーや即時型の薬剤アレルギーと呼ばれる疾患です。口の周りや口腔内が痒くなったり、全身に蕁麻疹がでたり、時には呼吸が苦しくなり血圧が低下しアナフィラキシーショックになることもあります。アナフィラキシーショックになった場合、重症の方では命に関わることになります。しっかりしたした後、一時的に症状を抑える効果がある「エピペン」を処方することがあります。
例えばエビを食べた後にいつも蕁麻疹がでる方は、エビに対する抗体(IgE抗体)を持っていて、エビを食べたことにより、その抗体を介したアレルギー反応が起こり蕁麻疹が出現します。
同じように何かに曝露した後に蕁麻疹が出る場合でも、アレルギー性ではない蕁麻疹もあります。物理性蕁麻疹と言われるグループです。皮膚表面の機械的な刺激、寒冷・温熱刺激、紫外線、水との接触など により生じる蕁麻疹をまとめて物理性蕁麻疹といいます。
最もよくみられる蕁麻疹は、機械性蕁麻疹です。掻破したところや重い荷物をもった部位に一致して、ミミズ腫れのような蕁麻疹ができる症状です。発症の原因は明らかになっていませんが機械的な刺激でできた蕁麻疹の部分に、アレルギーの原因であるヒスタミンが検出されることがわかっています。抗ヒスタミン剤が治療の中心になりますが、有効率は70%程度と言われています。
寒冷蕁麻疹は、寒冷刺激によって蕁麻疹が出現する症状です。例えば氷を手につけると、その部分だけ蕁麻疹が出現します。アレルギー性機序かどうかは不明で、特定の抗体は検出されていません。
日光蕁麻疹は後天性の光線過敏症で、ある日突然発症すると言われています。日光を浴びた部位に一致して、蕁麻疹が出現します。光によるアレルギー反応と考えられています。
アレルギー性蕁麻疹はどうやって診断するのか
アレルギー性の蕁麻疹の診断・原因検索には、症状出現時の様子を聞くこと(問診)、皮膚テスト(プリックテスト)、採血検査、誘発試験を組み合わせて行います。まず、最も大切なのは「症状出現時の問診」になります。症状が出現した前に食べていたもの、服用した薬などがアレルギーの原因になるからです。蕁麻疹が出た場合は、症状が出現する前に食べていたものや飲んでいた薬などを、詳しく医師に伝えるようにしましょう。
疑わしい食物や薬剤をいくつかピックアップし、症状が軽度であれば、少量を摂取してもらい症状が誘発されるかどうか調べることもあります。これを誘発試験といいますが、症状を再度誘発するため、リスクが伴う検査になります。必ず専門医のもとで行う必要があり、自己判断で施行することは危険です。
症状誘発試験は、危険性があるため症状が軽度の場合に限られます。その他の検査として、採血検査があります。自分の血の中に、アレルギー反応を起こす抗体(IgE抗体)があるかどうかを調べます。しかし、全ての食物や薬剤に対する抗体の検査できるわけではなく、検査できる項目は限られています。加えて、採血検査で陽性であるからといって、必ずしもその食物にアレルギーがあるわけではなく、逆に陰性でのアレルギーがないと否定することができないことも多くあります。
最後に、プリックテストという皮膚テストがあります。アレルギーの原因として疑わしい食物や薬剤を水などで薄めて、皮膚に少量押し付けるような形で表皮内へ曝露させ、蕁麻疹が誘発されるか調べる検査です。症状誘発試験よりも安全で、全ての項目が検査できることから、皮膚科ではよく行われる検査の1つです。
アレルギー性の蕁麻疹の治療とは
アレルギー性の蕁麻疹の治療の中心は、他の蕁麻疹と同様に抗ヒスタミン剤です。蕁麻疹が出現した際には、症状に対して効果がありますし、症状が誘発されそうな時に服用すると、重症化を防ぐため予防的にも役立ちます。
食物アレルギーや薬剤アレルギーで、蕁麻疹が全身に出現したり、血管浮腫(まぶたや口唇が浮腫む症状)が出現するなど重症な場合は、ステロイドの全身投与の適応になります。また、呼吸困難や血圧低下などのアナフィラキシーショックに至った場合は、エピネフリンの適応になります。アナフィラキシーショックは生命に危険を及ぼす事態になります。特定の抗原でアナフィラキシーショックを起こしたことがある方は、エピペンという自己注射キットが処方されることもあります。
アレルギー性の蕁麻疹の治療で最も大切なことは、アレルギーの原因をしっかり特定し、その原因を避けることで蕁麻疹を誘発させないようにすることです。
まとめ
ここでは、アレルギーが関与する発疹である蕁麻疹について説明しました。食物や薬剤が原因になることが多く、これまで摂取しても問題なかったものが、ある日アレルギーの原因となる場合もあります。蕁麻疹が出た場合は、症状が出現する前に食べていたものや飲んでいた薬などを医師に伝えるようにしましょう。
食物アレルギーや薬剤アレルギーは、蕁麻疹だけではなく、呼吸困難や血圧低下など重症な症状が出現することがあります。アレルギー性の蕁麻疹が出現した時は、専門医とともに原因検索を行い、しっかり治療していきましょう。

皮膚科専門医
岡田里佳
2008年名古屋市立大学医学部卒業。 内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。その後大学病院に戻り、急性期・慢性期の皮膚疾患を幅広く経験した。
資格:日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 日本内科学会認定内科医 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医 日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
カテゴリ: 蕁麻疹