TMクリニック 西新宿 皮フ科・内科

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院長コラム

2017.12.29

アトピー性皮膚炎の正しい治療方法ー日本皮膚科学会が作成したガイドラインに沿ってわかりやすく説明ー

こんにちは。TMクリニック西新宿院長のおかだりかです。
アトピー性皮膚炎は、慢性的な湿疹やかゆみを伴う疾患であり、多くの方が悩んでいる皮膚の病気の一つです。「これを飲めば完治する」といった治療法はありませんが、毎日のスキンケアや塗り薬、飲み薬で普通の人と変わらない状態を維持することは可能です。食事療法などの民間療法の情報があふれており、何が本当の情報かがわからなくなってしまっている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、日本皮膚科学会が策定している「アトピー性皮膚炎のガイドライン」に沿って、正しい知識をわかりやすく説明していきます。

アトピー性皮膚炎の正しい治療ーガイドラインに沿って説明ー

アトピー性皮膚炎は、誰もが一度は聞いたことがあるような、よくある皮膚の病気です。そのため、サプリメント、食事療法などの民間療法の情報があふれており、何が正しい情報かわからない方も多いかもしれません。使用する主な塗り薬に「ステロイド」が配合されているため、過度に副作用を心配し、使用を自己中断することで増悪を繰り返している患者さんにも度々会います。日本皮膚科学会は、2000年に初めて「アトピー性皮膚炎の診療ガイドライン」を策定し、2016年には改訂版が出されています。
ここでは、最新のガイドラインを元に、医学的根拠に基づくアトピー性皮膚炎の治療について、わかりやすく説明していきます。

治療の基本は、ステロイドの塗り薬

アトピー性皮膚炎の治療の基本は、ステロイドを中心とした塗り薬です。アトピー性皮膚炎の治療で使用する主な塗り薬は、「保湿剤」「ステロイド剤」「免疫抑制剤(プロトピック)」です。アトピー性皮膚炎の方は、皮膚が乾燥しやすい傾向にあるので、症状が安定している時も保湿剤の外用を続けることは重要です。保湿剤は、病院で処方されるもの以外に、市販でも販売されています。香料などがあまり含まれていない肌に優しい保湿剤を選ぶようにすれば、病院で処方される医療用医薬品としての保湿剤を使う必要はありません。
保湿剤は湿疹が出ていない皮膚にも使用し、全身に塗るようにしましょう。

湿疹が出ている部位は、保湿剤の他にステロイド剤が必要になります。「ステロイドの塗り薬」と聞くと、副作用が心配だから使いたくない、と拒否反応を示す患者さんがいます。副作用が全くない治療法ではありませんが、正しく使用すれば、副作用は最小限に抑えられます。逆に、副作用を過度に怖がりステロイドを使わずに治療を続ける場合、症状は悪くなり続けます。どのような薬にも副作用はありますが、それを怖がって使用しないと、症状は改善しません。
ステロイドの副作用は、顔や陰部など皮膚の薄い部位に多く見られます。特に顔は目立つところなので、ステロイドの副作用は最小限に抑えたい部位です。そこで登場したのが、プロトピックという免疫抑制剤の塗り薬です。プロトピックは、タクロリムスという臓器移植後の患者さんが使用する飲み薬を塗り薬にしたものです。免疫抑制剤と聞くと使用をためらう方がいるかもしれませんが、用法用量を守って使用する限り安全な薬です。特に、アトピー性皮膚炎の患者さんは、長期間ステロイドを塗り続けなければならないため、より副作用の少ないプロトピック軟膏へ切り替えることで副作用の出現を抑え、継続的な使用ができます。

湿疹が治った後の皮膚は、見た目では正常に戻ったかのように見えますが、皮膚の深い部分にアトピーの炎症が残っていることがあります。よく繰 り返す皮疹に対しては、一旦皮疹がよくなった後に、保湿剤によるスキンケアに加え、ステロイドやプロトピック軟膏を定期的に(週 2 回など)塗ることで、良い状態を維持しようとする治療法があります。これをプロアクティブ(proactive)療法といいます。良くなった皮膚に薬を塗り続けることに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、皮膚の深い部分の炎症をとるためだと考え、続けることが大切です。疲れている日など、スキンケアを行うことが面倒なこともあると思いますが、症状を安定させて増悪させないためには、日々のケアがとても重要になります。

<塗る量の目安>

Finger Tip Unit (FTU)
第 2 指の先端から第 1 関節部まで、口径 5 mm の チューブから押し出された量(約 0.5 g)が成人の 手掌で 2 枚分(成人の体表面積のおよそ 2%)と考えられています。

1FTU=約0.5g

1FTU=約0.5g(手のひら2枚分を塗る量)


その量を塗ると、成人が全身に外用した場合、1回あたり約20gを使用することになります。このガイドラインで推奨されている量を塗ると、多くの方はいつも塗っている量より多く感じると思います。外用療法は、毎日のことであり、グラム単位で塗る量を調整するのは難しく感じるでしょう。大切なことは、適切な量を毎日塗り続けることです。上記で示した適切な量を自分で一度塗ってみて、どの程度しっとり感じるかを体感するのがおすすめです。

塗ってもとまらないかゆみには、飲み薬を併用する

アトピー性皮膚炎の治療の基本は、塗り薬によるものですが、「かゆみ」に対しては飲み薬もよく使用されます。かゆみに対しては、抗ヒスタミン薬が最もよく使われますが、 その効果には個人差があると言われています。抗ヒスタミン薬によって、かゆみが収まる人もいれば全く効かない方もいます。抗ヒスタミン剤は、比較的副作用は少なくいくつも種類があるため、かゆみが強いアトピー性皮膚炎の方は、1つの薬で効かないからといって中止するのではなく、いくつか試してみるのもいいでしょう。「かゆみ」が強いと、どうしても掻いてしまい、しっかり塗り薬を塗っても皮疹が治りにくくなります。かゆみを抑えることは大切なのです。

飲み薬には、「シクロスポリン」という免疫抑制剤も使用されます。重症なアトピー性皮膚炎の患者さん(強い炎症所見を伴う皮疹が体表面積の 30%以上に及ぶ)に限定して、2008年から使用ができるようになりました。服用後から速やかにかゆみが減少することが特徴です。長期間服用すると、腎障害や高血圧などの副作用が出現するため、服用期間を限定して使用することが推奨されています。
服用期間は、8~12 週間が推奨さており、使用中は腎障害や高血圧,感染症などに注意する必要があり、定期的に皮膚科に通院しなければなりません。長期間の使用は副作用の出現頻度が上がるため、症状が軽快した後は塗り薬などの一般的な治療に切り替える必要があります。

保湿剤によるスキンケアは基本中の基本!

アトピー性皮膚炎の方は、皮膚が乾燥する傾向にあります。また、アトピー性皮膚炎でない方でも、皮膚の乾燥を放置すると、そこからかゆみが生じ湿疹になることがあります(皮脂欠乏性湿疹)。この乾燥に伴う湿疹は、特に冬場に多くみられる症状です。
皮膚の乾燥を予防する保湿剤の外用は、皮膚を良い状態に保つうえで、とても重要なことです。お風呂上がりにあまり時間をあけずに(5分以内がよいとされています)、全身に保湿剤を塗るようにしましょう。
保湿剤は、皮膚科で処方する医療用医薬品がありますが(ヒルドイド軟膏など)、特に医療用医薬品が優れていることはありません。市販薬でも保湿剤はたくさん販売されており、自身にあった保湿剤を選ぶことが大切です。アトピー性皮膚炎の方は、香料などが含まれていないような、肌に優しいものを選ぶことが大切です。

乾燥を予防するためには、保湿剤を塗るだけではなく、毎日の入浴やシャワーでも注意しなければならないポイントがあります。ナイロンタワシなどでゴシゴシ体を洗うと、その瞬間は気持ちがいいかもしれませんが、肌にはとても悪い影響を及ぼします。アトピー性皮膚炎の方のように肌が弱い方は、綿のタオルか手で泡を使って洗うようにしましょう。また、熱いお湯は、体がよく温まる一方かゆみを誘発します。熱すぎるお湯を使用しないようにしましょう。

悪化する要因をできる限り取り除こう

アトピー性皮膚炎が悪化する要因は、個々の患者さんによって異なります。食べ物で悪くなる方、汗で悪くなる方、ハウスダストで悪くなる方、など様々です。まずは、自分の悪化要因を知ることが大切です。ただ、多くの方に共通してみられる悪化要因は、「引っ掻くこと」「乾燥」「汗」「心理的ストレス」です。これまでお話したように、乾燥からかゆくなり、引っ掻いてしまい、アトピーが増悪することはよくみられます。これは、毎日のしっかりとしたスキンケアで予防することができます。
夏場に悪化する要因として、「汗」があります。汗をかかないようにすることは難しいので、汗をかいた後はなるべく早めにシャワーを浴び、皮膚を清潔に保つことが大切です。「心理的ストレス」は、なかなか自分でコントロールすることが難しいかもしれませんが、アトピー性皮膚炎の患者さんの中には、ストレスを感じると無意識に引っ掻いてしまう方がいます。そのような自分の癖を知ることで、無意識に引っ掻くことが減るかもしれません。
自分の皮疹がどのような経過で悪くなっているのか、まずはこれをしっかり知ることが、皮膚をいい状態にコントロールできる1歩になります。

その他の治療

<光線療法>

光線療法とは、特定の波長の紫外線を皮疹にあてる治療方法をいいます。ステロイドや保湿剤の外用、抗ヒスタミン薬内服などの一般的な治療で軽快しない方に適応される治療になります。もともと尋常性乾癬でよく使用されている治療法ですが、アトピー性皮膚炎の方でも効果があることがわかり、保険診療で施行できます。症状に併せて、定期的に通院する必要があります。また光線療法を受けている間も、通常の治療(スキンケア、外用、内服)は必要になります。紫外線をあてる治療なので、長期間継続することによる発がん性が指摘されています。無制限にできる治療ではないことを知っておきましょう。

<プロバイオティクス>

プロバイオティクス(Probiotics)とは、「腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義され、それらを含む製品、食品の総称としても使われます。乳酸菌飲料を飲むことによって、アトピー性皮膚炎の症状が改善したとする報告があります。まだ、明らかに効果があるとはいえない段階ですが、乳酸菌飲料を飲むことで、腸内環境がよくなり、皮疹が改善する可能性はあるでしょう。

継続的な治療がポイントーオンライン診療をうまく使おうー

ほとんどの患者さんは、「保湿剤+ステロイド外用+抗ヒスタミン剤内服」という基本的な治療を受けています。しっかりスキンケアができている患者さんは、年間を通じて増悪することなく過ごしていますが、汗をよくかく夏や、乾燥が強い冬場に一時的に増悪する方もいます。また、仕事や家事・子育てが忙しく、外用がしっかりできずに増悪する方もいます。
「これくらい皮疹がよくなったから塗るのやめよう」と自己判断し、外用を中止することで、増悪する方も多くみられます。アトピー性皮膚炎は、「これで完治」といった状態になることはとても少ないです。毎日の習慣としてスキンケアを行うことで、良い状態を維持することが最も大切です。
ただ、薬が手元にないと外用できません。忙しくて皮膚科の受診ができず、外用薬がなくなってしまい、皮疹が増悪して慌てて受診する患者さんもいます。アトピー性皮膚炎のように、継続的な治療を行う必要があるのに、忙しくてなかなか受診できない方には、オンライン診療がおすすめです。皮膚の状態が大きく変わらない場合は、スマホを使ったテレビ電話での診察で、薬を処方することが可能です。処方箋はその日の内に、クリニックから郵送するので、最寄りの薬局に取りにいって頂きます。
スキンケアは絶え間なく、継続的に行うことで、良い状態を維持できます。薬がなくならないように、受診が途切れないようにすることが大切です。

まとめ

アトピー性皮膚炎は、毎日スキンケアをすることによって、よい状態を維持することができます。そのためには、正しい知識をもち、継続的に受診することが大切です。汗、乾燥、ストレスなどの悪化因子を知り、それに対する対策を行うこともポイントです。
仕事、家事・子育てなどので多忙な場合、受診が途切れれしまい、薬がなくなることで症状が増悪する方もいます。症状が安定していれば、スマホでのオンライン診療も可能です。皮膚をいい状態に保つため、受診が途切れないことが大切です。

参考
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドライン2016年版

皮膚科専門医

岡田里佳

2008年名古屋市立大学医学部卒業。 内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。その後大学病院に戻り、急性期・慢性期の皮膚疾患を幅広く経験した。

資格:日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 日本内科学会認定内科医 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医 日本アレルギー学会認定アレルギー専門医

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カテゴリ: アトピー性皮膚炎

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