TMクリニック 西新宿 皮フ科・内科

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院長コラム

2018.01.14

重症のアトピー性皮膚炎の原因・採血でわかるマーカー・治療・合併症について皮膚科専門医が解説

こんにちは。TMクリニック西新宿院長のおかだりかです。
アトピー性皮膚炎の症状は、軽い方から重い方までさまざまです。重症のアトピー性皮膚炎の原因や重症度がわかる採血マーカー、治療方法などについて正しい知識を知っていますか。ここではアトピー性皮膚炎が重症になる原因、採血マーカー、治療方法、合併症(蜂窩織炎、白内障)についてわかりやすく説明していきます。

重症なアトピー性皮膚炎の原因ーフィラグリン遺伝子とはー

アトピー性皮膚炎が発症する原因は、遺伝的なもの環境要因などの多くあり、1つに絞ることはできません。アトピー性皮膚炎の患者さんは、外の刺激から皮膚を守るバリア機能が低下しています。また、逆に非特異的な刺激に対する皮膚の刺激性が亢進しているため、皮膚の炎症が起こりやすいと考えられています。皮膚のバリア機能の低下は、体の洗いすぎやスキンケアの不足など、乾燥が原因と考えられていましたが、同じようなスキンケアをしていても、乾燥症状が強い方がいます。それはなぜでしょうか。
表皮の角質細胞にある「フィラグリン」という物質が、バリア機能の形成や水分保持に重要な役割を果たすと言われています。アトピー性皮膚炎の患者さんの一部に、そのフィラグリンを作る遺伝子に変異があり、しっかりとした機能がないことがわかりました。つまりアトピー性皮膚炎の発症に、フィラグリン遺伝子の変異が関与してることがわかりました。フィラグリン遺伝子の変異はアトピー性皮膚炎の発症だけではなく、皮膚のバリア機能が障害されることにより、外来アレルゲンに対する感作が成立しやすくなるため、喘息やアレルギー鼻炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の罹患率も高くなると考えられています。このようなアレルギー疾患の発症を予防するためにも、フィラグリン変異を持つ方(特に乳幼児)に対して、バリア機能を補う治療(保湿などのスキンケア)やアレルゲンの曝露減らすといった指導が大切になります。

採血でわかるアトピー性皮膚炎の「重症度のマーカー」とは

アトピー性皮膚炎の患者さんの重症度は、皮疹の程度やかゆみで評価することが多いです。ただし、皮疹は見た目で評価するので、医師によってばらつきがあったり、かゆみは患者さんの自覚症状によるので、これもばらつきが生じます。採血のマーカーは客観的なデータとして、信頼性があります。ここでは、長期的なマーカーであるIgE値と、短期的なマーカーであるTARC値について説明していきます。

①IgE値

採血で測定できる総 IgE値は、アトピー性皮膚炎の長期的な重症度や病勢を反映すると言われています。IgE値はトータルのIgE値をみる「総IgE値」と、各アレルゲンに対するIgE値をみる検査があります。アトピー性皮膚炎患者では,総IgE値が高値になるだけではなく、ダニ,ハウスダスト,花粉,真菌,食物などの特定のアレルゲンに対するIgE抗体も検出されることが多いです。

②TARC値

平成20年から保険診療で測定できるようになった、比較的新しいアトピー性皮膚炎のマーカーとして、TARC(タルク、ターク)値があります。総IgE値が長期的なマーカーであったのに対し、TARC値は短期的な重症度や病勢のマーカーとして重要です。他にも、好酸球やLDH値などがアトピー 性皮膚炎の病勢マーカーとして知られていますが、血清TARC値は、小児および成人のアトピー性皮膚炎において,病勢をより鋭敏に反映するマーカーであると考えられています。

参考
日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎ガイドライン2016年版

通常の治療で治らない重症アトピー性皮膚炎の治療

ステロイド外用薬や抗ヒスタミン剤の内服などで改善しない重症のアトピー性皮膚炎の患者さんには、どのような治療があるのでしょうか。
副作用の点から、まず選択される治療法として、「光線療法」があります。特定の波長の紫外線を症状が出ている皮膚に当てることにより、かゆみや皮疹が改善されます。特別な機械を使用して行う治療になり、定期的に病院に通う必要があります。また、紫外線を浴びることになるので、長期間治療を行うと、紫外線による皮膚ガンの危険性があるため、治療できる期間が限られています。
光線療法は、安全な治療ですが、速効性はあまりない印象です。定期的に通院しなければならない点も、学生や働いている方や子育て中の方には大変なことでしょう。

次に、内服薬として「シクロスポリン」という薬あります。もともと、臓器移植後の免疫を抑える薬として使用されていました。シクロスポリンは免疫を抑える作用を持つ「免疫抑制剤」になります。これまで紹介した治療に比べて、作用が強い薬になるので、副作用も出現することが多いです。なので、シクロスポリンは通常の治療では改善しない重症の患者さんに限られ、内服する期間も8−12週間まで、と限定されています。長期間服用すると、腎臓の機能に影響が出たり、血圧が上がるなどの副作用が出現する可能性が高くなります。

また、現在、生物学的製剤という新しい薬の治験が日本でなされています、近い将来、注射製剤で重症のアトピー性皮膚炎の治療が行われることになる可能性があります。

重症アトピー性皮膚炎に合併する疾患

アトピー性皮膚炎の症状が重いほど、合併する疾患が多くなります。代表的な合併症について、説明していきます。

①蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの皮膚感染症

蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、皮膚の小さな傷から細菌が感染し、赤く熱をもち腫れ上がる症状をいいます。足によく見られる症状です。強い症状であれば高熱が出て、入院が必要な場合もあります。アトピー性皮膚炎ではない方でも発症する病気ですが、アトピー性皮膚炎はかゆみを伴うため、患者さんは我慢しきれず、寝ている時など無意識に掻いてしまうことがあります。掻いてしまうと、爪で皮膚を傷つけてしまい、時には血が出ることもあります。そこから細菌が感染し、蜂窩織炎に至ることが多いのです。皮膚はできるだけ清潔に保ち、しっかりスキンケアを行い、かゆみをコントロールすることが発症予防に大切です。

②白内障(はくないしょう) などの眼合併症

アトピー性皮膚炎の方は、目の病気を合併することが多いと言われています。特に若い方、顔面の皮疹が重症の方に、目の合併症が起こりやすいと言われています。特に白内障に関しては, 顔の皮疹の悪化や目の周りを掻いてしまうことが危険因子と考えられていますが、アトピー性皮膚炎自体による炎症も発症に関与しているとされています。しかし、まだその明確な発症機序はわかっていません。
その他にも、顔面の皮膚症状が重症の場合,眼瞼皮膚炎,角結膜炎,白内障,網膜剝離(もうまくはくり)などの眼疾患を合併しやすいと言われています。アトピー性皮膚炎の方(特に顔面の皮疹が重症の方)は、自覚症状がなくても定期的に眼科医に診てもらう必要があります。

まとめ

ここでは、重症のアトピー性皮膚炎の患者さんの、原因、重症度マーカー、治療方法、合併症について説明しました。やや専門的な内容になりましたが、アトピー性皮膚炎は長期的に付き合っていかなければならない病気であり、少しずつでも病気のことを理解していくようにすることが大切だと思います。
重症のアトピー性皮膚炎の患者さんは、皮疹の急性増悪や合併症のために入院加療が必要になる場合もあります。もちろん増悪しないことが最も大切ですが、増悪してしまった場合は放置せずにしっかり治療しましょう。日々のスキンケアを継続し、良い皮膚の状態・かゆみの少ない状態を維持し、生活の質(QOL)を維持していくことが重要です。

皮膚科専門医

岡田里佳

2008年名古屋市立大学医学部卒業。 内科を中心に初期研修を行い、その後皮膚科へ進む。大学病院での勤務を経て、皮膚疾患を合併しやすいアレルギー・膠原病診療を経験するため、約3年間内科医として勤務。その後大学病院に戻り、急性期・慢性期の皮膚疾患を幅広く経験した。

資格:日本皮膚科学会認定皮膚科専門医 日本内科学会認定内科医 日本リウマチ学会認定リウマチ専門医 日本アレルギー学会認定アレルギー専門医

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カテゴリ: アトピー性皮膚炎

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